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インタビュー – interview –

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理論創薬研究所 吉森様

2024 12/28
2023.12.29

起業までのプロセスを教えてください。

起業したのは30歳でしたので、もう20年近くになります。製薬企業に入って、当時は自分達でソフトウェアを作るのではなく、化学・生物知識のある人が既存のものを使って薬をデザインすることが主流であることに気づき、これは自分に合ってないと感じました。小さい頃からコンピューターでプログラミングをするのが好きだったので、自分でプログラミングして創薬したいと考え、起業しました。あと、大学の研究で、自分でデザインした化合物を合成した際に強い活性が見られたことがすごく嬉しかったんですよね。その時の喜びを忘れられないことが大きな起業のきっかけです。当時はインシリコ創薬が普及しておらず、日本でも3社くらいしか会社がなかったと思います。市場がなかったので最初の10年くらいは苦労しました。起業自体は大学の研究室の教授がサポートしてくれ、現在は6人で会社を運営しています。

インシリコ創薬という専門分野でビジネスをする際、仲間集めは大変ですか?

はい、その通りで人集めが1番難しい所です。最初は新卒の人を雇うこともしていましたが上手くいかなかったので、企業同士でコラボレーションする方向にシフトしていきました。iParkは正しくプロフェッショナルが集結している場なので、とても良い環境だと考えています。

インシリコ創薬を専門とする他社との差別化はどう図っているのでしょうか?

この業界は自分達の会社から論文を出せる技術がないと生きていけません。技術変化がとても激しい時代に自分達の技術が論文で世間に認められないと、製薬企業さんは相手にしてくれないんです。私も長年論文を発表してそれを商品やサービスに転換することをやってきたので、研究の面ではどこにも負けないスタンスでやっています。成果として、去年は15報の論文を出せました。私は、大きな会社にするよりも小さな規模でも専門性が高くお客様のニーズにしっかり応えられるような会社にしたいと思っています。

差別化を図る具体的な技術を教えていただいてもいいでしょうか?

最近ですと、化学構造式を画像に変換する技術を開発しました。化学構造式はAIに学ばせようとする時に学ばせにくいという欠点がありますが、それを画像に変換することでAIに入力しやすく新しい開発に繋がります。化学構造式を入力できるようなAIを開発することは今の我々の技術ではかなり難しいです。そこで、AIそのものは大企業のものを使い、そのAIに合った手法で入力するアイディアとしてこれを思いつきました。つまり、画像 を入力したAIの中で新しい化合物を作り画像として表示し、それを改めて化学構造式に書き直すことができるんです。これはあくまで仮想データですが、そのデータが積み重なることでより高性能な予想ができるようになります。
大企業の技術に追いつくことは到底不可能ですが、ビジネスをやる上では巨人の肩にどう上手く乗るかが重要です。今回開発した画像変換技術のように、化学の世界と情報の世界のインターフェースとなる技術を今後も開発し世の中に普及させたいと考えています。
未だに休日にはAIの論文を読んで自分でアルゴリズムを組み立てて論文を書いてという生活を送っています。しかしこれは自分にとって楽しくてやりたいことなんですよね。一般の企業さんとは違い、実は私は上場したいとはあまり考えていなくて、自分がやりたいことを永続的にやっていければいいなと思っています。

吉森さんが描く目指す未来はありますか?

私は創薬に携わっていますので、医薬品を作っているわけです。そして医薬品を最後に使うのは患者さんですよね。その患者さんに少しでも貢献したいと1番思っています。一つの医薬品には沢山の人が関わっていますが、その沢山の人の1人でも良いのでなっていきたいと願っています。
それと、最終的に私が目指しているものは、創薬をエンジニアリングにすることです。現在は思うものを形にできず、いろいろな化合物を探索する必要性があります。車や電化製品の設計のように、頭にあるものを形にするエンジニアリングの創薬を実現したい、これが私の夢です。

インシリコ創薬は儲かると思って起業されたのですか?

いえ、全然儲かる確信は持ってなかったです。市場に浸透するだろうなとは思っていたんですけど、なんと言っても創薬企業って他の分野に比べて圧倒的にお客さんが少ないんですよ。この分野で儲けたかったら医薬品の開発に直接関わってロイヤリティ収入をとるようなビジネスモデルに転換しないといけないので、最初の段階からかなり時間はかかるだろうなと思っていました。

起業当時はインシリコ創薬をビジネスにする前例がほとんどない中で、顧客からいくらお金を取るかなど、マネタイズ部分の難しさはありましたか?

おっしゃる通りマネタイズの部分は難しかったですが、こちらの希望する金額をぶつけてみてから交渉という形しかなかったですね。実は、起業当初は仕事として成り立つとは思っていたんですけど、どれぐらいの収益が出るのかなどの具体的な資産計画についてはできていませんでした。このビジネスをやってきて感じたことが、特にここ10年の技術変化が激しいということです。「常に何かを作り続けないといけない、自分達が変化し続けないと生き残れない」ということを痛感しました。

技術変化が激しい時代で、起業からの20年で失敗や窮地はありましたか?

ビジネスをやる上で、大きな収益源となる「柱」の仕事があるんですね。たまに先方の企業が倒産してしまったり事業転換してしまったりで柱が無くなってしまうことがあるんですけど、一時期3本の大きな柱が一気に無くなったことがありました。その時は、次のビジネスにつながるような技術開発を行っていたので、ギリギリ次のお客さんが付いて救われました。常に何か新しいものを作り続けるという心構えが功を制したと思います。

これから5年10年先、インシリコ創薬の技術もさらに成長していくと思うのですが、インシリコ創薬が成長し続けていったらどんな可能性を秘めているとお考えですか?

最終的には、ある疾患が見つかった時にそこから医薬品になる期間が3年くらいになるんじゃないかと考えています。現在はそのプロセスが10年〜15年かかっているので、格段に開発期間が短くなる可能性を秘めています。
あとは、貧困地域特有の病気は開発費に対して儲からないからいつまでも解決しないという問題がまだ残っています。インシリコ創薬の技術で安価で早く医薬品を開発できるようになるとこの課題解決もできるようなると考えています。

自分自身の誰にも負けない強みはなんですか?

私の強みは「興味」です。小さい頃からずっとプログラミングで何かを作るという興味が変わらないんですよ。ですから、これからどんな変化があろうと自分は必ず対応できるという自負があります。いつまでも興味があって楽しく仕事ができていて、この気持ちがある限り今の会社を続けていけるのかなって思っています。

文責:水戸宏輔

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