mRNAを用いたがんの早期発見は医学界では革新的な技術なのですか?
はい、そう思います。まず、どのように私達がその事業に携わり始めたのかを簡単に説明します。当社は現在トレーディングに強い会社ですが、今後はヘルスケアにも力を入れようと試みています。その中で、0→1でビジネスを作りこの世にない新しい価値を創造するmoon creative labが2018年に設立されました。同時期に日本のAIの会社であるpreferred networkさんが日本の国家プロジェクトに携わっていました。この国家プロジェクトは国立がん研究センターとの共同研究で、人間の血液中に何百種類とあるmRNAを抽出してデータ化し、がんがあるパターン、ないパターンを見分けるアルゴリズムを作るというものでした。つまり、体内のmRNAからがんの早期発見を期待できる技術開発です。国家プロジェクトの終了後にpreferred networksさんと当社でジョイントベンチャー(preferred medicine)を作り、この技術を持ってアメリカでビジネス化していこうという運びになりました。アメリカである理由としては、がん早期発見のマーケットが大きいからです。
少し分かりにくい所を紐解くと、Moon creative labという組織の中にいくつか新規事業があり、その第一号案件が私が担当しているpreferred medicineというわけです。
0から1を作り出す際に何が最も難しいですか?
答えがない中でどちらに進むかの意思決定がとても難しいです。特に、ヘルスケアの領域ではとりあえずやってみようがあまり通用しません。適当が効かない分野なので様々なことをテストしたり、過去例をたくさん調べるので膨大な時間がかかります。これこそが繊細さが求められるバイオテクノロジーの分野で事業を作る難しさであり、その積み重ねが他社との差別化に繋がっていきます。
確かに答えがない世界で事業を作ることはとても難しいと思います。では、その難しさを克服するために必要な要因は何だとお考えですか?
圧倒的に人の知見が大事です。しかし知見は1人のものに帰属するのではなく、知見を持っている人のネットワークを持つだけでも強みになります。この分野のことはあの人に聞いてみようなど、頼れる人がいることが重要なのです。実は正にそれが自分自身の悩みであるんですよね。preferred medicineにいる人たちは、長年エンジニアをしてきた人、研究をしてきた人などその分野のプロフェッショナルなんですよ。しかし、私はどの分野をとっても経験が浅く彼らには到底及びません。時には、私はこのチームのどこで価値を発揮しているのか悩んだ時期もありました。そこで気づいたのが、自分の強みを活かせるステージを自分で作らなければいけないということ。私の強みは「共感力」だと思っています。共感力が強いので、その人がどう考えているかを感じやすいと思います。スタートアップではお金もないし人を雇うことが大変なことです。しかしその中でも会社のために働きたい、と考えてくれる人を雇う方が将来的に成長できる企業に繋がります。1人1人のengagementが大事だし、1人1人が輝ける職場が大事だなと思っていて、他の人が輝ける舞台をデザインすること、これが自分の強みを活かせるステージだと確信しました。他の人の成功が自分の成功であり、他の人が輝けることが私の原動力なんです。Moon Creative Labでも、組織を大きくしていくためにどうやったら1人1人のEngagement を高められるかが課題になり始めて、それを解決できるプロはそんなに日本にいないかもと思い自分がなろうと決意しました。答えがない世界だからこそ自分の気持ちを伝え、共感力を大切にでき、その結果1人1人のEngagementが高まる組織を作っていきたいなと思っています。
社内起業家のメリットは何だと思いますか?
会社のネットワークを使えること、予算が多いことが大きなメリットです。また、企業内の専門人材に直接意見を聞けることもすごく大きいです。今から始める事業についての意見を聞き、ベストな選択を最初からできるのは最高なことですね。
三井物産という大企業で1事業を任される平岡さんのような存在にはどうやったらなれるんでしょうか?
私はとてもラッキーだと思います。あと、最近は若手だから何年も下積みという文化が薄れてきたように感じます。同じやり方では勝ち続けられない世の中で、会社も柔軟な発想を持った若手のポテンシャルに魅力を感じ始めてきているんだと思います。
平岡さんの夢は何ですか?
私の夢は学校を建てることです。その学校ではインクルーシブでクリエイティブな環境を作り、学生には自分で自分の健康を守りながら輝ける人に育ってほしいと願っています。自分自身大学までは守られた環境下で育ち、社会人になってこの健康という面は大きな課題に感じました。心身共に自分に1番合っているケアの方法を見つけながら、自分のやりたいことに向かってクリエイティブに頑張れる学校環境を作りたいと考えています。
大学はイギリスの大学に進学したということですが、海外の大学生活で変わったことはありましたか?
変わりましたね。イギリスで1人生活が始まり、全部自分で決めなければいけない環境に初めて身を置けた良い4年間でした。指示される前に自分で意思決定をできるようになったことは大きな成長です。あとは、全部を一生懸命頑張る必要はなく、自分のやりたいことをとことん突き詰めることも良いことなんだと気付きました。できないことをできるようにするより、できることをよりできるようにすることの素晴らしさを体感し、「他の人とどう違うふうになれるか」を考えさせられた大学生活だったと思います。私は何事にも長いスパンでこのようになりたいというものを持っていて、何か判断に困った時はそこに近づけるのかを判断軸にすることは大学時代に身に着けたものであり、今もビジネスに活かされています。あとは、やらないことを選択することも重要だと考えています。4つのことに25%ずつの力でやるより、2つに絞って50%ずつの労力を割いた方が重要なんだなって。全てを満遍なくやるのではなく、目指しているものに近づくためには後者の方が近道なんだと。やらないことを決めるってとても勇気がいるんですけど、大人のステップを上がるためには必要だと思っています。人に任せる時は私の強みである「共感力」が活きます。ただ単に自分でできないから任せるだけではなく、あなたにやってほしいとしっかり伝えるよう意識しています。
自分の想いを伝えるために意識していることはありますか?
絶賛練習中ですが、その人と同じ目線で話すようにしています。極端ですが、幼稚園生に話す時、執行役員に話す時、どこから話すのか、相手のシューズに自分を入れて相手の目線からどう話せばより理解してもらえるかを考えるイメージです。どれだけ自分が頑張っていても相手に伝わらなかったら意味はないと思っているので、しっかり伝わるように工夫しています。あとは文章で伝えるのが苦手なので、絵を描いて説明するグラフィックレコーディングを最近練習しています。何と言っても相手に伝わるのが1番重要なので、自分の強みである絵を活かして弱みである文章力を補おうという作戦です。
文責:水戸宏輔

