今行っている事業について教えてください。
今に至る経緯としまして、TSUTAYAの店長や、数店舗を管理するマネージャーを10年くらい勤めていました。その後2013年に公共事業の1館目としての武雄市図書館の立ち上げメンバーを務め、現在は徳山駅前図書館の館長や他図書館、公共施設の責任者を務めています。CCCとしましてはプラットフォームづくりとして民間事業と公共事業の両方をやっていて、私が担当している公共事業の中にも5つ行っているチャネルがあります。一つ目が図書館。そして、市民活動支援、美術館、賑わい交流施設、スタートアップ支援です。居心地のよい雰囲気づくりの図書館を目指した結果、武雄市図書館の来館者数は26万人から92万人と4倍近くまで跳ね上がりました。さらに、私が館長を務める徳山駅前図書館は設立1年目で年間来館者数が200万人を突破しました。
確かにTSUTAYA書店や図書館は特に用事はないのに行ってしまうような雰囲気がありますよね。その図書館の雰囲気づくりはどのような工夫をされているのですか?
特に意識しているのがTSUTAYA書店のコンセプトである「知性を纏う」場所を作るということです。そこに行くと頭が良くなった気分になる。人々が図書館でやってある活動が絵になる。単に勉強している、単に仕事をしている姿が絵になる。お客さんはその姿を見て自分もこんなふうになりたいと思い、同じ場所で活動しようと思ってくれるんですよね。それが来館者数の増加に繋がっているのではないかと考えています。
一方、図書館は静かにしなくてはいけないなどの作法があり、本が好きでない人は近寄り難いことが難点です。しかし、書店やカフェでは自分の好きなようにその場所を利用でき、お気に入りの場所を見つけることができればより行きやすくなりますよね。そのお気に入りの場所、落ち着く空間を意図的に作っています。また、TSUTAYA書店、図書館の中にあるスターバックスのコンセプトがサードプレイスですが、最近はフォースプレイスと言われています。コロナ禍でリモートワークスペースの需要が高まっていることから、「仕事とプライベートの統合スペース」が新しいプレイスとして認知され始めています。つまり、来る人にとってどういう使い方をしても良いけど、来てみたら人が人に影響を与える環境が広がっているんです。私は公共施設を担うことでその地域社会は良くできるんじゃないか、図書館に来る人の成長は支えられるのではないか、そんなことを考えています。ぷらっと来た人が周りの人に影響され成長し、いつか人に影響を与える側になる、そしてそれにつれて生活レベルや知識レベルが上がり「本物」になる。これが私たちが掲げる利用者成長ストーリーです。これが徳山駅前図書館のコンセプトである「未来の自分に出会う場所」に繋がってきます。そもそも図書館を建設する前に私たちは最初に町の課題を見つけ、その課題解決のために図書館というツールを用いています。年間3000人単位で人口が減少していくこの街で、図書館に勉強しにくる学生に、この街でもかっこよくてキラキラ輝いている大人がいるんだよと見せることで、その人たちに憧れて夢を持ち、人口減少の抑制に繋がるのではないかと考えています。「未来の私」とは、そこにいる年上のかっこいい人達のことを指し、将来この街に帰ってこようと思うきっかけになればと願っています。
全国の本屋の店舗が20年で半減している現状で、新しく図書館を設立する意味はなんでしょうか?
我々は書店で儲けようというビジネスモデルではなく、あくまで図書館施設の魅力化を狙っています。例えば、利用者へのアンケートで雑誌を増やして欲しいという声があります。雑誌は情報が新しく変わりやすいので鮮度価値は高いが、保管価値が低いです。ゆえに一般的な図書館ではあまりストックしていないんです。その希望に応えるためにTSUTAYA書店があります。図書館の良さは、色々な本が並んでいて偶然の出会いができることだと考えています。偶然の出会いをするためには電子書籍ではなくリアルな場所とリアルな本が必要不可欠です。私たちは儲けの出るビジネスモデルではない書店を、公共施設という形で維持していき、ぷらっと来た人が偶然本と出会い、そこから新たな発見や可能性に繋がる環境を目指しています。
学生時代にTSUTAYAでバイトをしていてそのまま就職したとお調べしました。就職まで至ったきっかけはあったのですか?
学生時代はバイトを沢山していて、仕事から学んだことがとても多かったことが大きな理由です。アルバイトの立場でも裁量権を持たせてくれて諸々任せてくれていました。実は今でもアルバイトの経験が生かされています。当時は問題だらけでクレーム対応を沢山していて、悪くないのに怒られる不条理さに疑問を感じ、根本の原因となっている運営システム改善をアルバイトの身でやり始めました。その結果、状況は改善し売上も上がっていきました。自分で考え行動し、その成果が出た経験が今にも繋がっています。また、アルバイト、社員、店長を経験したからこそ現場で働く人の気持ちがわかることは今の仕事にも活きいています。
自分自身の誰にも負けない強みはなんですか?
「具現化する力」です。もちろんアイデアを出すことも難しいですが、それを表現する方が実は難しいんです。コンセプトを目に見えるように体現する力、マネジメントに反映する力をもっていることが自分の強みです。
文責:水戸宏輔

